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【鍼灸真髄】 of 東洋医学と鍼灸

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41WSdzr2YXL.jpg 昭和初期から戦前にかけて、治療院前に門前市をなすほどに活躍したと言われるお灸の名人がいました。横山大観の腸チフスを治したという逸話もあり、また、経絡治療家である丸山昌朗は、沢田先生とそのお弟子さんであった城一格によって病を治癒してもらい、その後医者になりながらも、その恩に報いるために、鍼灸治療に専念したそうですが、沢田先生の周りにはそういったエピソードが尽きなかったようです。
 そんな沢田先生の治療をそばで見ていた通い弟子の一人が、著者である代田文誌です。代田文誌が通い弟子として沢田先生の治療の様子を観察し、その治療の様子を記録してたのが本書『鍼灸眞髄』です。代田文誌は歌人でもあり、文章を記すのが好きだったようで、その力量が本書にも発揮されています。
 沢田先生が好んで使った三つの経穴は、「中かん」「左陽池」「百会」ですが、これらの経穴は症状や病気を問わずに、身体全体を整えるものとして常用され、沢田先生の灸治療は、“沢田流太極療法”と名づけられることになりました。この代田先生の聞き書きである『鍼灸眞髄』からは、名人・沢田先生の灸の醍醐味をうかがい知ることができ、また臨床の様子などを垣間見ることができます。鍼灸初期の頃には、まず特効穴を学ぶことが求められることが多いですが、お灸による経穴を学ぶには好著だと思います。

 この本は、経絡治療や脈診の概要から始まり、脈診の位置、取穴の仕方などを、初心者に向けて平易な文章で書いてあり、まさに“すすめ”的な内容になっています。日本伝統鍼灸学会の会長であっても、初歩的な時代があり、そこからの積み重ねをして今日の首藤先生があるだと思います。伝統的な治療を学びたい鍼灸師の方へ、とてもお奨めな一冊です。経絡治療の入門から、中級くらいまでをカバーする内容であると思います。

本書データ

『鍼灸真髄』
著者 代田文誌
発行 医道の日本社
価格 2205円(税込み価格)
初版 1941年発行
対象 初心者・中級者
お薦め度 ☆☆☆☆☆
お灸の名人であった澤田健先生の治療風景がよみがえるような一冊です。澤田流太極療法と呼ばれる選穴の基本を学ぶことができます。鍼灸を学び始めた初心者の方から読める本です。

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