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【戦国武将の養生訓】 of 東洋医学と鍼灸

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sengokubusyou.jpg 室町・安土桃山時代に活躍した曲直瀬道三(まなせどうざん)と呼ばれる医家がおりますが、現在ではその活躍から「日本医学中興の祖」と称えられています。曲直瀬道三は、当初仏道を志しておりましたが、現在の栃木県の足利学校へ遊学した際に、その後の師匠となる医家・田代三喜(たしろさんき)に運命的な出会いを果たし、医学の道に進むことになりました。田代三喜は、その時代に普及していた『和剤局方(わざいきょくほう)』を重宝に扱っている医療界を批判し、陰陽、虚実といった本来の漢方医学(東洋医学)に基づいた医療に立ち返ることを主張しました。曲直瀬道三はその講義に魅了され、田代三喜の弟子として、師匠が亡くなるまで13年間師事をしていました。
 その後曲直瀬道三は田代三喜の実績を継承、発展させていき、足利義輝、毛利元就、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など、錚々たる戦国武将の主治医として活躍しました。特に毛利元就には厚遇され、元就の家臣たちに医学の講義をしております。さらに元就は道三に対し、毛利家繁栄の道と諍諫(そうかん・争いを諌める)の方法を問い、道三は『雖知苦斎一渓道三言上目録』というものを献上し、これは毛利家の家訓にもなりました。
 現在毛利博物館に、曲直瀬道三直筆の『養生誹諧』という本が納められています。これは道三がしたためた養生に関わる120首の歌を集めたもので、漢詩にも造詣が深かった道三の知識もさることながら、全編ユーモアに満ちながら、養生方法や、健康のありがたさを分かりやすく説いています。この『戦国武将の養生訓』(山崎光夫著 新潮新書)では、その『養生誹諧』の歌に並んで、意訳と解説が書いてあり、とても読みやすくまとまっています。

『戦国武将の養生訓』(山崎光夫著 新潮新書)は、『養生誹諧』に続き、道三が著した『黄素妙論』という房中術に関する本文と解説も掲載されています。房中術とは、SEX(セックス)でありますが、当時はお世継ぎを作るためにはとても大切なものであり、また、身体にとって重要な先天の気である“精”をいかに守っていくかということが求められていました。本来の医療とかけ離れているように思えますが、これもまた一つの養生法であり、健康を保つ秘結でもあります。現在は不妊症も多く、セックスレスの夫婦も多いと聞きます。そのような意味からも、性生活のあり方を曲直瀬道三から学ぶことも一つの解決になるかもしれません。

本書データ

LinkIcon『戦国武将の養生訓』
著者 山崎光夫
発行 新潮新書
価格 735円
初版 2004年発行
対象 一般・初心者・プロ
お薦め度 ☆☆☆☆☆
室町・安土桃山時代に、当代きっての名医として活躍した曲直瀬道三が、どのような医療観の持ち主であったのかを垣間見ることができ、とても興味深い資料です。戦国武将がいかに身体を大切にしたかもわかります。日本の東洋医学・鍼灸医学・漢方の独自の発達の一端を知ることができます。

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